世界遺産で国宝の姫路城について、構造や特徴など見るべきポイントを、簡単な説明でまとめました。
姫路城は、400年以上も前の木造建築で、敵から守る工夫や、からくり仕掛けなど、内部に見どころがたくさんあります。
姫路城の中は何階建てで、すごいところはどこなのか、高さや大きさ・広さがわかる概要とあわせて、通称「白鷺城」は何がすごいのかを解説します。
姫路城の構造・特徴とその大きさ

姫路城は、姫路市街の北に位置する姫山と、その周辺の平地を利用して築かれた、平山城です。
小高い山の上に、白壁の壮大な天守が、そびえ立っており、別名「白鷺城」とも呼ばれます。
1601年から8年の建築期間を経て、天守が完成しており、築年数は400年を超えます。
平山城とは
お城の分類のひとつで、平野にある小高い山や丘などを利用して、築かれた城のこと。分類はその他に、山の上に築かれた山城、平地に築かれた平城などがある。
2021年7月時点で、日本国内で25件の登録がある、ユネスコ世界遺産のひとつで、法隆寺とともに最初に登録された文化遺産となります。
姫路城の指定・登録
・1931(昭和6)年 天守が国宝に指定
・1951(昭和26)年 新国宝に指定
・1993(平成5)年 世界文化遺産に登録
姫路城の基本情報
所在地 | 兵庫県姫路市本町68番地 |
階層 | 5層6階、地下1階 |
大天守 | 延床 2,409m2 |
内曲輪 | 敷地 230,000m2 |
築年数 | 約400年 |
姫路城は高さ何mで何階建て?
姫路城が立っている、姫山は高さ45.6mあり、その上に天守台が築かれ、天守の建物が立っています。

姫路城大天守の構造は、5層6階、地下1階となっています。
外から見ると、屋根の数から5階建てに見えますが、城郭建築では階段の構造を「階」で表しますので、6階建てとなります。
石垣の内側は、地下の階層となっており、建物とあわせて、地上6階・地下1階の、7階構成になっています。
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姫路城大天守は、東西2本の大きな柱で支える内部構造となっており、柱は地階から5階の梁(はり)まで通っています。
東西に並んでいる、大きな柱の長さは、24.6mにもなります。(※パンフレットより)

姫路城をつくる際には、大量の石が集められて、基礎となる土台が築かれています。
お城の石垣は、築かれた年代によって技術が異なり、姫路城では、秀吉時代に築かれた部分も見ることができます。
周辺の山々から採石された石もあるといわれ、重い石をどこで採石して、どのように運んだのかと考えると、お城の魅力が広がります。
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姫路城の特徴・すごいところ7選

姫路城が、日本一の名城と言われるのには、およそ3つのポイントがあります。
- 建物の構造がよく整っており、形容が秀でて美しい。
- 縄張り(建物の配置)が複雑で、巧妙に設計されている。
- 建築されたものが、比較的よく現存している。
※参考「姫路城の話」橋本政次(平成5)
日本にある城の天守で、江戸時代または、それ以前に建てられて、現存しているものは12天守あります。
姫路城はそのひとつで、最大級の大きさを誇り、日本の城郭建築を代表する、存在となっています。

特徴 ① とにかく白くて美しい
姫路城の美しさを象徴するのが、白漆喰で覆った、その白さです。壁や屋根瓦の継ぎ目など、表面が白漆喰で仕上げられています。
漆喰(しっくい)とは
石灰を主成分とした塗り壁材のこと。姫路城の漆喰は、消石灰、貝灰、すさ、海藻などが使われている。
姫路城の漆喰は、白漆喰総塗籠造という工法が用いられており、薄く何度も塗り重ねられた厚みは、2~3㎝にもなります。

特徴 ② 複数の天守で出来ている
姫路城は、メインとなる南東の大天守に、3つの小天守が四角く配置されて、渡櫓(やぐら)でつながっています。
複数の天守で構成する、この形式・分類を「連立式天守」といいます。
大小4つの天守がならんで、一体的に景観を成しており、見るポイントによって、異なる姿を楽しめるのが特徴です。
それぞれの天守が、等間隔で並んでいるのではなく、微妙にずれて並んでいるのが、美しく見える理由でもあります。
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特徴 ③ 大天守が長方形
姫路城は、メインの大天守が、東西に幅広い長方形、他の3つの小天守が、正方形の建築様式で建てられています。
大天守最上階の長方形は江戸時代の様式で、小天守は桃山時代以前の様式となり、二つの様式が併存しているのが特徴です。
小高い山の上に、大きさと建築様式が異なる天守が配置されており、どの角度から見ても、壮大で美しく見えるように建てられています。

特徴 ④ 破風の巧みな配置
姫路城は、破風が各層で巧みに配置されており、千鳥破風、入母屋破風、唐破風、比翼入母屋破風の4種類が見られます。
破風(はふ)とは
屋根を山形にした両端にできる、三角形の部分のこと。城の建築では天守の装飾を目的として配置されることがある。
大天守の第二層が、東西の破風によって、大屋根のようになっており、第三層以上を、その上に乗せたような形になっています。

特徴 ⑤ 屋根の反りの曲線美
姫路城の屋根は、まっすぐな直線ではなく、軒隅に向けて、ゆるやかに反っており、その曲線美が特徴的です。
また、屋根の上のシャチホコ瓦、破風の下にある、懸魚(げぎょ)と呼ばれる、木製の飾り板などで、天守に装飾が施されています。

特徴 ⑥ 狭間がたくさんある
姫路城ではいたるところに、狭間が見られます。主に、丸型や三角形、正方形、縦長長方形の4種類があります。
狭間(さま)とは
天守や櫓(やぐら)、土塀の壁面に開けられた、弓矢・鉄砲を撃つための穴のこと。
姫路城では、約1,000ヵ所ある狭間のうち、片ひざをついて、鉄砲を撃つ時に使われる、居狭間が多いのが特徴です。
姫路市中心部 Wikipediaより
特徴 ⑦ 左巻きの縄張り
姫路城は天守を中心に、左回りに堀をめぐらせ、渦巻き状の3重構造となる、縄張りとなっています。
縄張り(なわばり)とは
敷地に縄を張って建物の位置を決めること。城の場合、天守や曲輪の配置など、基本となる設計のことを指す。
今残っている姫路城の堀は、内曲輪(うちぐるわ)の堀だけですが、その外側には中曲輪(なかぐるわ)、そのさらに外側には外曲輪(そとぐるわ)がありました。
この縄張りにより、天守を中心に3つのエリアを形成し、城下町を区切られた域内に包容しました。

日本では古来より、名古屋城、熊本城、姫路城をもって、日本三大名城といわれてきました。
しかし、熊本城の天守は明治十年に西南戦争で、名古屋城は昭和二十年に太平洋戦争で焼失しています。
それぞれ、その後に復興はしているものの、江戸時代の天守が現存しているのは、姫路城だけとなってしまいました。
今日、姫路城が日本一の名城と言われるのは、戦火を免れ時代を乗り越えながら、江戸時代の様相を残しているのが、理由のひとつだといえます。
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姫路城の見どころポイント10選

こちらが姫路城のチケット売場です。ここから先が、姫路城の有料区域になっています。
姫路城は、外から見て景観を楽しむことができますが、入城口から入って、天守の内部に登ってみるのがおすすめです。
ここで受付しているガイドを利用して、説明を受けながら姫路城を観覧すると、よりいっそう楽しめます。

こちらが、姫路城の有料区域を示した図です。
入城口から入るとすぐに、菱の門があり、いくつもの門を通りながら、天守の内部に登城していきます。
姫路城の天守を見学して、順路を進んでいくと、もとのチケット売場に、一周して戻ってくるようになっています。
姫路城を観覧する際には、お城ができた由来や、ゆかりの人物のエピソードなどを、ざっくりつかんでおくと、見るべきポイントがつかめます。

見どころポイント ① 菱の門から三国堀
入城口から入るとすぐに、姫路城の表玄関となる、菱の門があり、右手に三国堀が見えてきます。
三国堀は、天守が建っている姫山と、西の丸がある鷺山の間に設けられた、四角い堀です。
三国堀の水面には、天守が映り込むので、天候など条件が整うと、美しい逆さ姫路城が撮れるスポットです。

見どころポイント ② 西の丸庭園と化粧櫓
三国堀の西側には、天守が完成した後に、伊勢桑名から移封した、本多忠政によって築かれた、西の丸があります。
今の西の丸は、庭園になっていますが、当時は御殿が建っており、御殿を囲んでいた百間廊下や化粧櫓が、現在でも残っています。

西の丸は、本多家の移封にともない、本多忠刻と再婚した徳川家康の孫、千姫が暮らしたところとして有名です。
西の丸の百間廊下と化粧櫓は、観覧できるようになっており、暮らした資料が、展示されています。
建築を説明したパネルや、白壁の材料など、姫路城に関する詳しい資料が見られるので、じっくりとお城を楽しむ方におすすめです。

見どころポイント ③ 暴れん坊将軍のロケ地で有名な将軍坂
こちらは「はの門」の手前にある、ゆるやかな坂道です。
この坂道は、時代劇「暴れん坊将軍」の名場面が、撮影されたとして有名で、通称「将軍坂」と呼ばれています。
暴れん坊将軍とは
1978年から2002年にかけて、テレビ朝日系列で放送されていた、時代劇のシリーズ番組。主演は俳優の松平健(マツケン)で、江戸幕府8代将軍の徳川吉宗を、長年演じ続けた。
番組のなかで毎回登場する江戸城は、実は姫路城で、西の丸や将軍坂など、姫路城で撮影されることも多かったようです。
NHK総合テレビ「ブラタモリ」姫路城の放送では、オープニングで紹介されており、ここで今回のお題が示されていました。
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見どころポイント ④ 城内の瓦にある紋
姫路城では現在でも、建物の瓦などの、いたるところに、紋が残っています。
なかには、キリシタンであった黒田官兵衛にゆかりがあるといわれる、十字の紋瓦も見られます。
それぞれの紋は、ゆかりの人物を表しているので、背景の出来事とあわせて、お城を楽しむポイントです。

見どころポイント ⑤ 大天守を支える東大柱・西大柱
大天守に入ると、東西に並ぶ東大柱と西大柱を、実際に手で触りながら、間近で見ることができます。
姫路城は、改修工事をかさねながら、建築当時の状態が、そのまま残っている、日本城郭のひとつです。
天守の内部に入って、構造や仕組みを実際に見ながら、約400年前の建築技術を、体感できるところが魅力です。

姫路城では、戦に備えた防御の仕掛けが、いたるところで見られます。
当時の人が考えた、敵から守る工夫が、そのまま残っているのも、姫路城の見どころです。

見どころポイント ⑥ 武具掛け (火縄銃・槍など保管する)
天守の壁面には、火縄銃や槍などを保管しておく、数多くの武具掛けがあります。
武具掛けには、火縄銃300丁、槍70本が掛けられるようになっており、姫路城が武器倉庫として使われていたことを示しています。

見どころポイント ⑦ 武者隠し (からくり隠し部屋)
大天守の3階、フロアの四隅には、ひそかに兵を配置できる隠し部屋「武者隠し」があります。
万が一にも敵に侵入を許した場合に、隠れた兵が応戦するという、からくり部屋です。

武者隠しのなかには、扉が開いている箇所があり、外から覗くことができます。

見どころポイント ⑧ 石落とし (攻め込む敵から守る工夫)
大天守の1階には、石垣を登って攻めてくる敵に石を落とす、石落としがあります。
壁の一部が、出窓のようになっており、出窓の底部分にあたる扉を開くと、真下に石垣がみえるようになっています。

こちらは、西の丸にある石落としです。開いた扉から、下の石垣をのぞけるようになっています。

こちらが、大天守の外側から、石落としを見たところです。
石垣を登ろうとした敵は、この角度で、隙間から石が落とされます。

見どころポイント ⑨ 最上階からの眺め
大天守の最上階は、展望台のようになっており、眺望が東西南北に開けています。
晴れた日には、大天守の最上階から南方向に、瀬戸内海まで望むことができ、約6㎞先にある、臨海地域の煙突が見えます。

窓からは、屋根が間近に見えるので、瓦や漆喰の盛り方など、遠くからでは判別できない、建物の細部を見ることができます。

姫路城大天守6階部分は、すべてに窓が設けられる予定でしたが、建築中に変更されて、4隅の窓がふさがれました。
この部分は、平成の改修工事で確認されて、発表当時は「幻の窓」と呼ばれるなど、話題になりました。

こちらが、大天守6階の隅にあたる部分を、内部から見たところです。
文献や記録がないので、ふさがれた経緯は不明ですが、耐震性を高めるためではないかと、考えられています。

見どころポイント ⑩ 姫路城の鯱(しゃちほこ)を年代で比較
姫路城の鯱は、時代とともに取り換えられており、明治・昭和・平成の改修時に交換されて、昔のものが姫路城内で展示されています。
鯱(しゃちほこ)とは
屋根の上の両端につけられる、飾りの一種で、守り神とされている。姿は魚で頭は虎、尾ひれは上を向き、背中に鋭いトゲを持っているという、想像上の動物を模している。
大天守の屋根にある鯱は、通常、オスとメスで一対になっていますが、姫路城の鯱は、両方ともにオスになっており、全国的に珍しいと言われています。

姫路城の鯱は、時代によって違いがあり、それぞれに表情が異なります。
明治:ウロコの彫が一番深い
昭和:ヒレが大きく華やか
平成:昭和の形状を踏襲しつつも、より迫力を持たせている
姫路城では、並んだ状態で展示されているので、よく見てみると、各時代の違いが観察できます。

姫路城では、春・夏・秋・冬の季節によって、お城を背景にした様々な景色が楽しめます。
雑誌の紹介などで、よく見かける定番の角度から、少し離れた周辺の山々まで、様々なフォトスポットがあります。
季節・時間・ポイントを考えながら、アングルを変えて、美しいフォトグラフが楽しめるのも、姫路城の魅力のひとつです。
姫路城が通称「白鷺城」と呼ばれる由来

姫路城は、別名「白鷺城」とも呼ばれます。読み方は「しらさぎじょう」もしくは「はくろじょう」です。
白鷺とは
サギ科の鳥のうち、全身白色の「白いサギ」の総称。コサギ、チュウサギ、ダイサギなど。
白鷺城の呼び名の由来には諸説があり、橋本政次「姫路城の話」のなかでは、4つの説が挙げられています。
- 同じ山陽道に、黒い外観で「烏城(うじょう)」と呼ばれる、岡山城がならんでおり、白鷺城と対照的に呼んだ。
- 姫路城の天守が建っている姫山のことを、もっぱら鷺山ともいったので、鷺山の城ともいった。
- 建物外観が白く美しいので、あたかも白鷺が飛んでいるように見えるから。
- 古来より五位鷺(サギ科の鳥)が、多く生息していたから。
姫路城利用案内

姫路城の有料区域に入る入城券は、大人1000円・小人300円です。
その他には、姫路城に隣接する日本庭園「好古園」とのセット券や、団体割引券があります。
バスを利用する方は、バスとセットになったお得な切符が、神姫バス姫路駅前案内所で販売されています。

姫路城の入城時間は、通常期で9:00~17:00です。16:00まで入城できます。
6月1日~9月24日のハイシーズンは、9:00~18:00で、1時間長くなり、17:00まで入城できます。
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姫路城を観覧する時間は、スムーズに見て回ると、トータルで1時間半~2時間程度くらいになります。
ハイシーズンや、特別展示がある場合は、入城に待ち時間が発生することもあるので、滞在時間に余裕をもって計画するのがおすすめです。

有料区域の出口では、姫路城のキーホルダーや御城印、関連したゆるキャラのグッズなどが、お土産として販売されています。
土産店はこのほかにも、三ノ丸広場の中や、南に出たところの、家老屋敷跡公園などにも並んでいます。
姫路城の周辺スポットもおすすめ
建物を見て美しいと感じることは、普段の生活では、あまり多くないと思います。
姫路城を見ていると、天守の美しさと、400年以上も前に、この建物を作り上げた人たちに、関心するばかりです。
姫路は海あり山ありで、姫路城以外にも、行楽スポットがたくさんあります。
また、ナイトタイムの歓楽街には、姫路ならではの食事処や、楽しい飲み屋さんが、盛りだくさんです。
姫路城の観覧と、周辺の街歩きを合わせて、旅行のプランを立ててみては、いかがでしょうか。
海抜 91.9m
‐大天守高さ31.5m
‐‐天守台高さ14.8m
‐‐‐姫山の高さ45.6m
(※パンフレットより)